04介護施設では、1人何役も仕事をこなす事が多いと思います。しかし介護についてはこれ迄の経験や勉強した知識で新しい業務でもカバー出来るかもしれませんが、経理となると難易度が急に高くなるかと思います。
ここでは、そんな介護施設で急に経理業務を任され、右も左も分からない方のために、経理実務で必要な最初の知識「発生主義と現金主義」の違いについて分かりやすく解説いたします。
1.今回の論点「発生主義と現金主義」とは
今回の論点である、発生主義と現金主義を説明するにあたって、先ず経理初心者が理解しやすい現金主義にについてご紹介したいと思います。
1-1.初心者でも理解できる現金主義とは
この説明をより簡単にイメージできるようにまとめると以下のようになります。
支出=費用
となります。
つまり、入ってきたお金は基本的に売上、出て行ったお金は基本的に費用となります。
(もちろん借入や返済のお金の動きもあるので、一概に、収益・費用だといえませんが、イメージを持つにはこれで十分だと思います)
介護報酬を現金主義で計上する場合についてはこちら
1-2.落ち着いて考えれば単純な発生主義
一方で発生主義については、厚生労働省のサイトのようにまとめられています。
すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない。
ただし、未実現収益は、原則として、当期の損益計算に計上してはならない。
前払費用及び前受収益は、これを当期の損益計算から除去し、未払費用及び未収収益は、当期の損益計算に計上しなければならない。
引用:https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/igyou/igyoukeiei/houkoku/08soneki.html
なんだか、初心者には難しい言葉が羅列されていますね。それではより分かりやすく解説していきましょう。
発生主義がどのようなものかを考えるために具体的な例を用いて考えてみましょう。
発生主義とは、収益費用が発生したタイミングを認識して、その発生したタイミングで、仕訳計上を行うようにすることです。
具体的には、事業年度が3月末であった場合、介護報酬やその他の支払いに関して、現金主義では、4月以降にお金が動くため、4月以降(つまり、新たな事業年度)の収益と費用になってしまいます。
しかし、発生主義で考えた場合、4月に起きた入出金は、介護報酬は3月以前に発生した介護サービスに伴うもの、費用も3月に発生した電気代など費用である事があり、それらは厳密には、3月末までの事業年度の収益費用として、数字を損益計算書などに反映させる方が、より実態に適した報告書になると言う事です。
2.現金主義と発生主義のどちらがいいの?
上記で、ご説明した事だけを考えると発生主義で経理を行った方が、厳密に事業年度内の費用と収益を認識する事で、より適切な経営結果を示すレポートを作成する事が出来る様になります。
しかし、発生主義では、実際にお金の動きが無いにもかかわらず、収益費用の発生したタイミングを適切に認識せねばならず、その分経理業務としての負担が大きくなります。
一方、現金主義を採用した場合では、お金の動きだけを単純に認識すれば良いので、その分経理業務の負荷は軽くなります。そのため、日本では、小規模事業者である青色申告者の事業所得等については現金主義による会計処理が認められています。
つまり、ルール上は発生主義と現金主義のどちらを採用する事も可能になります。
したがって、後は発生主義と現金主義のどちらを採用すべきかと言うのは、経営者の意見次第ということになります。
あなたが勤務する介護施設は発生主義と現金主義のどちらを採用しているのでしょうか?
もし不明な場合は、上司や施設長に聞くことが経理業務を始めるための初めの仕事になると思います。