介護業界で働く方にとって、シフトによって勤務スケジュールや労働時間が決まる事の方が多いですよね。しかし、シフトで勤務を決める場合、注意しなければいないルールがいくつかあり、実際には知らず知らずにそのルールを破っている施設も少なくないのではないでしょうか?
ここでは介護施設でよく見られるシフト組みでの勤務を科す場合の注意点をご紹介します。実は違法だった!なんて事もありますのでご注意くださいね!
1.そもそもシフトを組むには
そもそもシフトを組む事ができる介護施設の条件ってご存知でしょうか?
シフト勤務に対応するためには、変形労働時間制の届出た上でシフト勤務対応をする事が多いです。ここでは、シフト組みのために届け出る、変形労働時間制を簡単にご紹介します。そして、その条件、注意点についてご紹介します。
※シフト組み勤務を行うためには、変形労働時間制だけではなく、変形労働体制でも可能ですが、変形労働体制は1年間のシフト組を指し、シフトスタート日の30日前にシフト決めをせねばならず、運用には不向きのため取り入れている介護施設は少ないと思いますので、ここでは割愛します。
1-1.変形労働時間制に当てはまる条件
1か月単位の変形労働時間制を採用するには以下の要件を守らなくてはなりません。
1 対象労働者の範囲
法令上、対象労働者の範囲について制限はありませんが、その範囲は明確に定める必要があります。
2 対象期間および起算日
対象期間および起算日は、具体的に定める必要があります。 (例:毎月1日を起算日とし、1か月を平均して1週間当たり40時間以内とする。)なお、対象期間は、1か月以内の期間に限ります。
3 労働日および労働日ごとの労働時間
シフト表や会社カレンダーなどで、2の対象期間すべての労働日ごとの労働時間をあらかじめ具体的に定める必要があります。その際、2の対象期間を平均して、1 週間あたりの労働時間が40時間(特例措置対象事業場は44時間)を超えないよう設定しなければなりません。
なお、特定した労働日または労働日ごとの労働時間を任意に変更することはできません。
4 労使協定の有効期間
労使協定を定める場合、労使協定そのものの有効期間は2の対象期間より⻑い期間とする必要があります。
(参照厚生労働省:URL https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/dl/140811-2.pdf)
2.シフト組みの注意点
上記で変形労働時間制について少しご紹介したしましたが、シフトを組む際の注意点についてご紹介します。
2-1.変形労働時間制の対応はしてるか?
シフトを組むために必要な変形労働時間制の条件を満たしているかが、重要になってます。
上記で紹介した変形労働時間制の中で、介護事業などの福祉関係の施設で守れていない事が多い点についてご紹介します。
①シフト組を月中で変更していませんか
介護施設などでは従業員の急な欠勤や体調不良などでシフトを、月の途中で急に変更したりすると思いますが、上記の「3」にある通り、シフトは、設定した起算日から最終日まで事前に全て決めておく必要があります。そして、特定した労働日または労働日ごとの労働時間を任意に変更することはできません。
ここでいう起算日は、いくつかある変形労働時間制の選択によって異なりますので、気になる方は以下をご参照ください。一例を紹介すると1週単位の変形労働時間制を採った場合、前週末までに翌週の確実の労働時間を書面により通知しなければなりません。
②変形労働時間制の届出は出していますか?
常時働く労働者が10人以上の場合、就業規則の作成義務があり、これを労働基準監督署に届け出なければなりません。
従業員が増えた何も関わらずこの届出を行わなければ、罰則が発生する可能性があります。
また、常時働く従業員が9人以下の施設においても、就業規則作成する義務はありませんが、変形労働時間を採用する場合は、労使協定または就業規則に準ずるものに規定することが必要となります。
③シフト組んだ時から違反している
上記「2」でご紹介したように、変形労働時間制を採用するためには、事前に定めた労働時間が、週40時間を超えている事はありませんか?
1ヶ月単位の変形労働時間制を採用している場合は、月単位で平均して週40時間を下回らなければ問題ありませんが、1週間単位の変形労働時間制を採用していた場合、週40時間を超えた時点でアウトになり得ます。
2-2.違反していた場合
いずれの変形労働時間制の要件を満たさないで週又は日の法定労働時間を超えて労働させた場合には、労基法32条違反として罰則の適用を受けることになります。
また労基署に労使協定の届出をしなかった場合には、30万円以下の罰金が科されます。
加えて、起算日からのシフトを期日までに通達していなかった場合にも30万円以下の罰金が科されることになります。
3.不安になったら専門家へ
労働条件周りには規定も含めてきちんとしておかないと、何かあった際に労働基準監督署から指摘や指導、罰則が与えられる可能性があります。
そのため、上記で見られた例に当てはまるかもな?不安だな?と思ったら、すぐに専門家に相談してください。
お抱えの社労士がいらっしゃる場合は、その方へ。いらっしゃらない場合は、お近くでもネットでもいいので、まずは相談してみて下さい。
しかしながら、社労士さんにも、変形労働時間制について、よく理解していない方もたくさんいらっしゃいます。社労士さんに相談しても、有耶無耶になってしまった場合は、変形労働時間制に強く専門性の高い社労士さんとご契約された方がいいかもしれません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?うちの施設大丈夫?ヤバいんじゃない?と思った方も少なくないと思います。ここで紹介したのは、あくまで注意点ですので、変形労働時間制を専門家なしで適切に運用する事は難しいため、少しでも気になったら専門家を頼ってみてくださいね。また、職員の方がご覧になっていて気になった場合も、未払残業代が発生する可能性もありますので、専門家に相談してみてください。